第19章 〜祈り〜
『夢を壊して悪かったが、俺をヒーロー設定
して思い出すことで、怖くて辛い記憶を
上書きしてだんだろ。それをいつの間にか
恋だと勘違いしてしまってたなら、ちゃんと
誤解は解いた方がいいと思った。
思春期の大事な時期を存在しないヒーローに
時間を使うのは勿体ないと思ってな。
もう、分かっただろうが、俺はヒーローでも
なんでもない、何処にでもいる28のただの
おっさんだからな』
そう言ってフッ笑う信長の顔は
優しさに満ちていた。
///ドキッ///
(こんなに、穏やかな顔で笑える人なの?)
理想と違い、失望したとの思い込みが
強くなって、信長の嫌な部分だけを
誇張して見ていた。
理想だけで見る信長でも
失望だけで見る信長でも
それは、ありのままの信長では
ないことにやっと気づく事ができた詩織。
(なんで、気づかなかったんだろ・・・
なんで、忘れてたんだろう・・・
そうだ、最初からこの人は優しい人
じゃない。
いくら泳ぎが得意でも、危険がないわけじゃい。
自分だって下手したら巻き添えになるかも
知れないのに、それでも危険を顧みず
見ず知らず私を助けてくれた。
この前も今も、この人なりの気遣いと
優しさで接してくれてたんだ・・・
なのに、私は、自分のこと
ばっかりで・・・)