第19章 〜祈り〜
『俺を思い出せば、セットでその時の記憶も
喚起されるからな。だから、分からないと
言ったんだろう。
この前俺に会って帰った後も
何ともなかったのか?』
(そう言えば、フラッシュなんとかとか
PTなんとか言ってたな・・それって
自分と会ったことで、思い出したくない
記憶まで思い出すかもしれないって
心配してくれてたってこと?
・・・あんな、態度で帰ったのに?)
自分にかけられていた思いやりに気づき
さっきまでの頑な気持ちが、解れはじめた
詩織は素直な気持ちで
『はい。激しい自己嫌悪以外は
特に問題ありません。あの時は失礼な態度を
とって、すみませんでした。』と、謝った。
『フッ、正直だな。まぁ、俺も女性に
仁王立ちで、キレられたのは
初めてで、なかなか新鮮な体験だったがな』
『ゔぅ・・それは、もう勘弁してください』
思い出すだけで、恥ずかしさが
込み上げてくる詩織。
『しかし、俺がヒーロー設定でずっとお前の
記憶に居座ってるとは思いもしなかった・・
だが、実際に会ってみたら
俺が、ヒーローじゃなかったことに
幻滅したんだろう?』
『いや、それは・・・』と
詩織の心の動きを、まるで直に見ていたか
のように、言い当てる信長に返す言葉もない。