第19章 〜祈り〜
こんなに、この人にイライラするのは
何故だろう。
答えは、もう出ていた。自分が7年も
想い続けた理想と、現実の信長が
違っているということ。
勝手に膨らませ続けた期待と妄想に
勝手に自分が失望しただけなのだ。
理想を押し付けたところで
信長は、信長。
そんなことは、もうわかっている。
ただこれ以上、自分の憧れた理想像を
汚されたくなかった、そっとしておいて
欲しかった。だからもう
会いたくなどなかったのに。
それは、自分にも言えること。
憧れた人に会うのなら、可愛いくて
素敵な自分でいたかった。
こんなに、惨めで可愛げのない姿の自分を
一度ならず、二度も晒したくなどなかったのに。
(ヤバイ、これ以上考えたら泣きそう・・・)
ずっと黙り込み、頬杖で口元を隠し
ひたすら窓に目を向ける詩織。
潤んだ瞳で、悲痛な表情になっている顔が
サイドミラー越しに見えた。
『さっきは、急に声をかけて悪かった。
家康達を追いかけようとしてただろ?
何で、声をかけなかったんだ?』
頬杖をやめ、パッっと信長の方を
驚き振り向いた。
(えっ?待って、この人いつから
私を見てたの?)
『そもそも、何であそこにいたんですか?
スーパーなら、病院の近くに大きなスーパー
あるし、駅ビルにだってはいってるのに
わざわざ、さっきのスーパーで買い物ですか?』
『まぁな、あのスーパーの近くに
通いの老舗があってな。』