第19章 〜祈り〜
荷物を取り返せないまま
結局、車で送ってもらう事になった詩織。
助手席にのり、納得できないまま
ぶすっとした顔で窓に顔を向け
頬杖をつきながら
(何で、こんな事になってんの?
何なのこの状況・・・)
自分の身に起こっている有り得ない
シチュエーションに、どう解釈し
どう納得するべきか、ぐるぐると
考えの中に入り込んでいた。
『・・・・ト』
声が聞こえた気がして
信長の方に振り向いた。
すると、突然キスをされるかと思うほど
身体を近づけ、迫ってくる信長に驚き
(///な、な、なにー!!///)
咄嗟に身構え、腕でガードするよに
怯える詩織。
信長は栞の斜め上から、シートベルトを
ひっぱり出すと、カチッと締めた。
それから、フッと鼻で笑われ
『シートベルトしないと、俺が捕まる。』
『ああ、シートベルトね!締めないとですよね
ハハハ・・・』と動揺を隠しながら
(なんだ、シートベルトね
あーっ、びっくりした///)と
ドキドキが止まらなくなる詩織。
シートベルトが締まった事で
濡れたTシャツの感触をみぞおちのあたりに
冷たく感じる。このままでは
ジャケットやシートベルトが
汚れてしまう気がして
『あんな失礼なこと言って帰ったのに
何で私に声なんてかけたんですか?
無視して、通り過ぎればジャケットも
車のシートも汚されずに済んだのに・・・』
と、また素直ではない言い方をした。