第19章 〜祈り〜
すると、詩織より早く隣に置いてあった
荷物を手にとる信長。
『何するんですか?返して下さい。』
と、更にムッとする詩織。
『お前、そんな格好で帰る気か?』
と、胸元を指さされた。
白いTシャツは、自分が思っている以上に
染みが広がっていて、汚れてデロデロに
なっていた。
『あっ』と言ったが、急に声をかけられた
せいだと、怒りがこみ上げる詩織は
握り拳になり、わなわなしながら
『誰のせい・・・!』と言いかけたが
(勝手に驚いた、自分のせいじゃん。
完全に八つ当たりだ)と言葉を
飲み込み『平気です!』と淡々と言い
荷物を取り返そうとした。
『そうだ、俺が急に声をかけたせいだ
だから、家まで送っていってやる。ついて来い』
そう言って、詩織の荷物を奪ったまま
歩き出した。
『ち、ちょっと、何を勝手に。
結構です。歩いて帰りますから!
荷物返して下さい!』
(もう、なんなのよー?)
追いかけようとした、詩織の前で何を思ったか
急に立ち止まった信長は、荷物をおき
自分が羽織っていた、薄手のジャケットを脱ぎ
詩織の肩にかけた。
『えっ?』と不意を突かれる詩織。
『駐車場まで、それで我慢しろ』
そう言うと、また荷物をもってスタスタ
と歩き始めた。
自分を気づかってくれた事に
思わず(///キュン///)となる詩織。
(いやいや、キュンとかしてる場合じゃない。
荷物取り返して、帰らなきゃ!)
『ちょっと、待って下さい!荷物ー』と
後を追った。