第19章 〜祈り〜
(あっ・・・ダメだ・・
付き合えないんだ、あの二人。
せっかく、両想いだって分かったのに。
桜奈が徳永さんの本心知ったら・・?
もしかしたら・・考え直すとか?
いや、いや、桜奈に限って
そんなこと絶対しないし、できないよ・・・
両想いなのに、一緒にいられないとか
一体何の罰ゲームだよ。辛いな・・・
それだったら、徳永さんの気持ちは
知らない方がいい。
うん、そうしよう。
徳永さんの気持ちは、気づかなかった
ことにしよう。
それに、片想いだと思ってる方が
諦めつく・・・よね?たぶん・・)
二人の背中を見送りながら
桜奈向けた、独り言のはずだった。
でも、それは自分にいい聞かせても
いるような心の呟きでもあった。
二人のお邪魔虫にならないよ時間をおいて
帰ることにした詩織。
またスーパーに入り飲み物を買うと
入り口に設置されてあるベンチにストンと
座った。
午後3時を回ったと言うに、ギラギラと
アスファルトを照り付ける太陽。
行き交う車のエンジン音が霞むほど
ジージー、ミンミン鳴くセミの声。
日陰になっているベンチに座っていても
視界の先に見える日向部分と、強制的に
聞こえてくるセミの鳴き声で、熱さは倍増し
汗がじわじわと滲み出る。
『あー、もー暑いー、桜奈と徳永さんの
イチャつきを見せられて
余計に暑いわ、チッ』
やっかみと、羨ましさ半分で
舌打ちする詩織。
だがすぐに『はっー・・でもな・・
やっぱり初恋は 実らないもんなのかな・・・』
桜奈と自分の叶うことのない
想いに気持ちを馳せた。
ため息まじりに、ガクッと項垂れ
炭酸のペットボトルの蓋を回すと
プシュッと音がした。
肩を落としたまま
『どうして上手く行かないんだろ。
私と違って、両想いなのにさー』と
独り言を呟きながら、ゴクゴクと
炭酸を飲見始めた詩織だったが
ふいに『誰が両想いだって・・?』と声がした。