第19章 〜祈り〜
次の日、無事にマンションの契約を
済ませ帰る途中、バイト帰りの桜奈と
駅で一緒になった。
『あっ、今帰りですか?』
『お疲れー、偶然だね。』
『そうですね。』
と、偶然でも一緒に帰れると思うとうれしくなり
にっこりと笑顔を返す桜奈。
『今日は、部屋の契約でしたっけ?』
『うん、そう』
と言うと、書類の封筒を桜奈の方に見せ
『無事、契約は済んだ。
引越しは20日になるかな』
『そうですか・・なんか、家康さんがうちに
きてから、あっという間でしたね。
たった2ヶ月だったのに、ずっと一緒に
暮してたみたいで、不思議です』と
(本当に、お別れなんだな・・・)
ほんの数秒前、一緒に帰れると嬉しかった
気持ちが、急にしぼんでいく。
憂いをおびた瞳で微笑む桜奈。
桜奈の寂しそうな表情に気づいた家康は
沈んでいく空気を払拭するように
『ほんと、最初は目も合わせてくれなくて
俺、完全に嫌われてると思ったしね』
と、茶化した。
『もう、あれは、一緒に住む話を聞いてなくて
恥ずかしくて、戸惑ってただけですってば。』
『そうそう、あんな力強い、戸惑ってます!の
どや顔も初めてみたわ』と、握った手で口元を
隠すように、思い出し笑いする家康。
『もっー、そんな前の話します?
今は、ちゃんと目を見て話してるじゃ
ないですかぁ!ほらっ!』と桜奈の
困惑ぶりを面白そうに蒸し返す家康に
今は、違うから!と弁解しながら
あえて目を合わすように
家康の顔をジッーとみた。