第19章 〜祈り〜
お互い想い合っていても
隣にいることは、勇気がいる。
努力もいる。
一番怖いのは、自分といて幸せだと
思って貰えなかった時、それは自分だけを
見てほしいと望んだ相手の心を
手にできないことより辛い。
誰よりも幸せでいて欲しい人が
自分といる事で、幸せになれないかも
知れない。
小夏が片足を失って、気づいたことは
好きな人と、想い合い一緒にいられた
あの時間は、奇跡に等しいかけがえのない
日々だったと言うことだった。
当たり前のように、手にしていた幸せが
手からこぼれ落ち、それがどんなに
大切で、愛おしいものだったか
失って初めて気づく自分の本当の幸せ。
そして、自分の本当の気持ち。
生きている限り、遅いなどと言うことは
ないはずなのに、不安がいつもいつも
自分の行手を阻む。
家康も桜奈も小夏もそして栞も
同じ気持ちを抱えながら
自分より、誰かの気持ちを優先する余り
想いは、行き違う。
光秀からのメールに揺れ動く小夏に
家康から連絡が入った。
『部屋を見つけた引越しする。
自分の気持ちも、言われた通り清算するから
心配しなくていい。俺の気持ちは変わらない』と。
メールを読んだ小夏は
(そうだよ。もう後戻りはできない
こんなに、必死に私を支えてくれようとしてる
家康を拒むなんてできないもの・・・)
そう、思い直し光秀のメールは
なかったことにしようとする小夏だった。