第19章 〜祈り〜
(ここは、病院?
私どうして・・?さっきまでみんなに
婚約のお祝いして貰って・・
風が強くて・・看板が・・!!!)
『光秀・・家康は?家康は大丈夫?』と
自分の身に起きたことが、はっきりと
わからないまま、家康の心配をする小夏。
『大丈夫だ・・怪我もしてない』
『そうか・・それなら良かった』
安堵するように、まだ麻酔が残っている
小夏は、うつらうつらし始めた。
『小夏、ゆっくり休め。
それから、俺を信じて待っていろ』
そう言うと、優しく頭を撫でる光秀。
『・・・(待ってろ?)』声にならないまま
また、眠りの中へ落ちて行った。
次に目覚めた時、光秀の姿は無かった。
そして、自分の身に起こったことの
告知を受け、両親から光秀の留学の話を
聞かされた。
こんな身体になった自分の元を去って
行ったのだと、小夏は一人失意の中にいた。
しかし、誰にも心配をかけまいと
努めて明るく気丈に振る舞った。
ただ、誰も居なくなった病室に一人になると
どうしようもない、絶望感と虚無感に苛まれた。
『待ってろって、どう言う意味?』
小夏には、その真意はわからないまま
全てを忘れさろうと、リハビリに打ち込み
一人で生きて行くのだと、何度も何度も
自分に言い聞かせ、止まらないよう
動き続けた。
立ち止まって考えてしまうと
自分が壊れて行きそうで不安だったからだ。
光秀の留学の話は、前々から持ち上がっては
いたが、小夏との結婚の為に
一度は断った光秀。
しかし、事故はそれから間もなくしてのこと。
留学を決意し、上司に再度頼み込み
あっという間に、旅立ったのだ。
1日も早く、小夏身体に役立つスキルを
学び帰ってくる為に。