第19章 〜祈り〜

そんな事情を知らない小夏は
光秀を諦めるしか無かった。

光秀が待っていろと言ってくれた。
けれど、片足を失い、この先
自分が光秀の隣にいる自信も
資格もない気がした。

（あの人の足手纏いだけには、絶対に
なりたくない。あの人の人生の邪魔するのも
そう思われてしまうかも知れないことも
死んでも嫌よ！！）

そして、自ら家族に宣言したのだ。
結婚はしない、これから先一人で生きていくと。

光秀の事情を知っているのは、小夏の両親と
家康の両親、そして信長だけ。
光秀は、出発前に両親に事情を説明し
挨拶をして旅立った。

光秀の申し出は、小夏の両親にとり
娘を心から大事にしてくれていると
有り難かった。

だが、一方で娘の性格を
よく知っていた両親。
きっと、光秀が別れないと言っても娘は
光秀を想い、断固、拒絶するだろうと
分かってもいた。

両親も、片足を失った娘が優秀な光秀の
妻としてやって行くには、負担が大きいのではと
心配もあった。

その上で、娘の気持ちを尊重したいと
光秀には話した。
もし、留学から帰ってきて、娘が光秀と
一緒になりたいと言うなら、どうか宜しく
お願いしますと。
ただ、将来ある光秀に小夏を背負わせるのは
忍びなく、今回の婚約の話は無かった
事にして欲しい、もし光秀の気持ちが
変わったとしても、気に病むことなく
自分の人生を大事にして欲しいと願い
そう伝えた。

光秀は、婚約解消で構わないと両親に伝え
ただ例え、何があっても小夏以外は
考えられないし戻ってきたら
また必ず振り向かせると断言し
その日が来るまで小夏の負担にならないよう
事情は知らせないことを小夏の両親と約束した。