第19章 〜祈り〜
『俺も、人間だからな。面白いものは
面白いと思うぞ、普通に。』
(あそこまで、俺に啖呵を切るやつなんて
そうそう、出くわさないからな・・)
そして、またふっと笑うと
『もう、会うこともないだろうがな・・』と
呟いた。
『そうなんだ。まぁ、俺がどうこう言うこと
じゃないから、別にいいんだけどさ。
じゃ、俺帰るよ。書類、サンキューな』
『引っ越しが決まったら、連絡しろ。
次は、俺が上杉さんに挨拶に行く。』
『えっ?姉貴がくるんじゃないの?』
『この前は、学会があって阿茶子に頼んだが
今度は、俺が行く。親父達がいないんだから
兄として、弟が世話になった挨拶にいくのは
当然の礼儀だろ?』
『あー、うん。分かった。じゃ連絡入れるよ。』
『ああ、そうしてくれ』
書類を書いてもらった、家康は信長のマンション
を後にした。
帰宅の途につきながら、家康は
(書類も揃ったし、明日持っていって
審査が通れば、ほんとに終わるんだな・・・)
信長にも断言したように、結婚をやめる
つもりは無い。自分の独りよがりだと
言われれば、そうなのだろう。
小夏も自分に付き合ってくれていること
など、家康も分かっていた。
婚約を解消したいと言えば、ようやく
意地を張るのををやめたかと、家族も小夏も
そう言うかも知れない。