第19章 〜祈り〜
『元気になって良かったです。
来週、退院するなら俺が部屋使わせて
貰ってても大丈夫なんですか?
必要なら、早めに荷物をまとめて
部屋を移動しますけど』と気遣う家康に
『いいのよ。詩織は寝る場所さえあれば
いいんだから。暫くは、桜奈と姉妹水入らずで
寝てもらうわ。いいわよね?桜奈』
『うん、もちろん!お姉ちゃんに
聞いてみたいこと、いっぱいあるもの』と
公園で初めて会った時も病院にお見舞いに
行った時も、栞が誰と自分達を見間違えたのか
知りたかった。
知りたいと言うより、桜奈が考えていた
相手なのかを確認したかった。
もし、そうなら徳川家康と奥さんの話が
聞けるのではないかと思っていたのだ。
生まれ変わりを信じているわけではない
桜奈だったが、栞の身に起きた
ことを考えれば、この世の中あり得ない
ことなどないのかも知れないとさえ
思えてくる。
同じ時代に、戦国時代に夫婦だった人達と
同じ名前で出会い、出会った瞬間にずっと
会いたかった人だと思ったのは、何故なのか?
出会うことが運命だったのなら
こんなに好きになってしまったのに
どうして、運命の相手ではないのか?
栞から話を聞く事ができたなら
納得する何かを得られるのかも知れない。
きっと家康とは、どこでどんな形で
出会ったとしても、一目見た瞬間に
恋に落ちていただろう。
そのことだけが、自分の運命だったと言うこと
なのだろうか?