第19章 〜祈り〜
『ハハハ、そうか。初めの頃は
プンプンしてたのになぁー。
家康君と暮らすのは、僕も楽しかったよ。
ほら、うちは娘ばかりだし、息子が
いたらこんな感じなのかなとか思ったり
してね。だから桜奈の寂しい
気持ちもよくわかるよ。』
『ほんと、そうよね。でも家康君の
勉強の為にも落ち着いた環境で
過ごすことは、大事だもの。
気に入った物件だったなら尚更ね。
ここにいると、私達が家康君に
甘えちゃうからね』とクスッとする千里。
『いや、おじさんにもおばさんにも
桜奈ちゃんにも本当によくして
もらって、居心地良すぎて正直、離れがたい
ですよ。でも、俺の方こそこれ以上長居すると
甘えてしまいそうです』と穏やかに微笑んだ。
上杉家で共に過ごした時間は
家康にはきっと一生忘れられない
記憶として残ることだろう。
それくらい、家康にとって
桜奈との出会いも
鷹介や千里との出会いも
大きなものだった。
ふと、思い出したかのように千里は
『あっ、そうだ。家康君のお引越しって
だいたい20日くらいになるかしら?』
と、尋ねた。
『はい。遅くともそれくらいには
入居は可能になるって話でした。』
『じゃ、17日だと荷造りとかで
忙しいかしらね?その日、私の実家の
神社で大祭があってね。桜奈も
その時に奉納の舞を披露するの。
毎年の事だけど、地元ではなかなか評判
なのよ。せっかくだし、お祭りに行けないかな
と思ったのだけれど。忙しいわよね?』
『あっ、前に話しを聞いたお祭りですね。
大丈夫です。桜奈ちゃんの
神楽みてみたいので、行きたいです』
『そう!ぜひ見てやって。
良かったわね、桜奈。』