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また、恋してくれますか。

第19章 〜祈り〜


突然泣き出した桜奈に
慌てる鷹介と家康。
『ど、どうしたんだ桜奈!』
いつも、ニコニコと笑顔を絶やさない娘の
涙に、鷹介はオロオロ。

千里だけは、桜奈の気持ちに
気づいていた。
(初恋だもね・・・)
桜奈の肩を抱き寄せ、頭にをなでながら
『桜奈は、家康君にはよくして
もらったものねぇ。
一人っ子で育ったようなものだから
お兄さんみたいに頼もしい人と
お別れだと思ったら、寂しくなったんだと
思うわ。ねっ、そうでしょ』と言うと
涙を拭いながらコクッと頷く桜奈。

兄だなんて思ったことなど
一度もなかった。けれど、気持ちに気づかれては
ならないと千里の言葉に頷いて
涙の理由を誤魔化すよりほかなかった。

心の中では泣き止もうと必死だった。
(泣くな!泣きやめ!変に思われる・・・
泣いたらダメ・・)だが、涙はとまらない。

分かっていたのに、覚悟していたはずなのに
覚悟が全然足りていなかったと痛感する桜奈。

『泣くほど、寂しいなんて思ってもらえるなら
俺としては、嬉しいよ。言うほど頼りに
なってはなかったと思うけど・・・』と
言う家康に

ふるふると首を振り、心の中で(違うの・・)と
否定するのが精一杯だった。

今すぐ、側に駆け寄って抱きしめてたく
なる気持ちを抑えながら『ありがとう』と
言う家康もまた切なさを隠した微笑みを
浮かべた。

桜奈に、泣くほど別れを
惜んでもらえて、嬉しかった。
けれど、桜奈と同じく
この別れに胸が痛まないはずも
なかったのだ。
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