第18章 〜輪廻〜
信長は、自分でも不思議だった。
言うほど、人に対して興味も関心も
あるわけではない。
冷静沈着と言うより、もはや冷徹。
決して、冷たい人間ではないが
威厳と冷気に満ち、近寄り難い雰囲気を
醸し出している。
深入りするとも、逆に踏み込まれることも
ない人間関係で過ごしてきた。
そんな信長が、誰かに、ましてや
高校生に興味を示す事がなどあり得なかった。
詩織に興味を持つ、自分が気になった。
その理由を知る為に、信長は詩織に感じる
不思議な感覚の正体をもう少し詳しく
探る必要があると思い、少し一緒に過ごして
みたくなった。
『命の恩人の頼みですから・・・
拒否権は、なさそうですね。
私で良ければ、お供しますよ』と答えた詩織。
詩織の中でも、長年温めてきた
理想の信長と、現実の信長のギャップが
徐々に、広がって行く。
(やっぱり、理想と現実は違うわよね。
分かってはいたけど、この人かなりドSの
俺様な感じが否めないわ・・・しかも、鋭い。)
妄想上で理想のエア彼と過ごした日々が
長すぎて、現実の信長に若干引き気味の詩織。
あんなに、ドキドキしながら病院に
入ってきたのが、嘘のように落ち着き
詩織もまた信長観察が始まっていた。
信長に誘われるまま、中庭まできて
ベンチに腰掛けると、隣に信長も座った。