第17章 〜他生〜
自分達の進む先の、道が重なることが
ない事だけは確定している事実。
(どう考えたって、今一緒にいられる時間を
大事に過ごさなきゃ、だよな・・・)
そんな事を思っているうちに
いつの間か、桜奈の方が数歩ほど
先を歩いていた。
長い髪を耳にかけながら
振り向き『家康さん?どうしたんですか?
置いて行っちゃいますよ!』とふふと笑う
桜奈。
さっきの、家康の優しい笑顔一つで
機嫌が直っていた桜奈。
(ふふ、私も単純だなぁ・・・)
こんな風に、二人で歩いていられるだけで
他愛ない話が自然に出来るだけで
桜奈は幸せだった。
置いて行くと言われた言葉は
そのまま別の意味で、家康には響いた。
(ほんと、置いて行かれる気分だよ
桜奈は、きっとどんどん前に
進むんだよなぁ・・そこに俺は居ないけど)
桜奈のこの先に続く未来に
自分の姿はない。
それでも、今、側にいられるなら
迷うのはもうやめよう。
散々、悩み、迷い、苦しみ
嬉しいことより、切ないことの方が
多すぎる片想い。
でも、出会わなければ、恋をしなければ
こんな想いにたどり着くこともなかった。
君が笑っていてくれるなら・・・
貴方が幸せでいてくれるなら・・・
例え、隣にいられるのが自分ではなくても
相手を想う気持ちが、自分を癒し満たして行く。
それを人は、『愛』と呼ぶのだろう・・・