第17章 〜他生〜
『もちろんよ!まぁ、信じられないのも
無理はないと思うけどね。貴方が京都で
行方が分からなくなった日ね、ママ病院に
行ったの。そしたら、桜奈を
授かってるって分かって。
驚かせたくて、旅行から帰ってきてから
話すつもりだった。でも、貴方は帰って
来なかったわ・・・
後になって、落とし物として届けられてた
私と鷹介さんの為に仕立ててくれた着物と
貴方が使ってたバッグと手紙を引き取って
貴方の身に何があったか知ったのよ。』
と、思い出すようにしながら
穏やかに語る千里。
『そっか、あの時の着物ちゃんと届いてたんだ。
そっか、良かった・・』と思いながら同時に
その当時の覚悟と自分を必死に抱きとめ
ワームホールに飲み込まれるのを阻止してくれた
信長の温かい力強い感覚が蘇った。
そして、その温もりを試し、はぐれてしまった
自分を抱きしめるように、自分の腕を
掴むと、また肩を震わせ涙を流した。
『栞・・・今は、色々と混乱してると
思うけど、まずはしっかり元気になって
悩むのは、その後にしましょ。
疲れちゃうから、ほら横になって
少しやすみなさい。』と、千里に
背中を支えられるようにしながら
ゆっくりと横になった。
『ごめんね、ママ。
せっかくお見舞いに来てもらったのに
取り乱してばっかりで、ごめんね。
桜奈ちゃん、家康君。』
涙を拭いながら、それぞれに謝る栞。
『大丈夫、気にしないでお姉ちゃん。
夏休みだし、またお見舞いくるし!
ねっ、家康さん』と家康の方を見る桜奈。
『はい、また伺います。早く良くなって
下さいね。』と家康も声をかけた。