第16章 〜慟哭〜
家康は、ずっと気になっていた。
桜奈の初恋の相手が、よりによって
信長なのかと。
大人な対応で、桜奈の好印象を
得たことが分かり腹立たしい気分になった。
眉間にシワを寄せながら、ジトッと
信長を無意識に睨んでいた。
『じゃ、僕はこれで失礼します』
そう言い軽く会釈する信長。
『本当にありがとうございした』と
お辞儀を返す千里と一緒に頭を下げる
桜奈。
すれ違いざまに、家康の肩にぽんと
手をかけた信長は
『自分の立場、分かってるよな』
とボソっと耳元で囁いた。
振り向きざまに、そんなことは言われなくても
分かってる!と挑むような目で睨み返す
家康に、分かってるならいいと言いたげに
ニヤッとすると何事もなかったように歩き出し
ひらひらと後ろ手を振っていた。
睨んだまま(っんと、むかつく!!)
と心でボヤく家康。
どうやら、信長に自分の気持ちを
見透かされたのだと気付いた家康は
(小夏といい、兄貴といい、何なの!?
そんなに、俺って分かりやすいのか?
ああ、腹立つ!!)とますます、イライラし
眉間のシワは深くなっていた。
信長に何かを囁かれ、更に難しい顔に
なっていく家康に気づいた桜奈。
(お兄さんに何か言われたのかな?
機嫌悪そう・・・ああ、でも小田先生って
大人で素敵な人だったなー!!
早く、しぃちゃんに教えたい!!
絶対、会わせたい!!)
家康とは逆に、上機嫌の桜奈をみて
ますますもやぁっとした気分も機嫌も
悪くなってしまう家康だった。