第16章 〜慟哭〜
『初めまして。小田です。
弟がお世話になってます。』
と、言ったがその後にクスっとし
『でも、初めましてじゃないの知ってたの?』
と言われて
『えっ?』と驚く桜奈に
『10年前くらいに、君とは一度会ったこと
あるんだけど、覚えてた?さっきの間は
そのせいじゃないの?』と尋ねてきた。
『やっぱり、そうなんですね!
海で友達を助けてくれた、あの時の
お兄さんが先生だったと分かったのが
実は、昨日なんです。
父から聞いて私も知ったばかりで
私も友達を助けてくれた人が
こんなに近くにいたんだと、驚きました。
また、お会いできて、嬉しいです。
その節は、大切な親友を助け下さって
本当にありがとうございました。』
と深々と頭を下げる桜奈。
『だいぶ前の話だし、そんな畏って
お礼言われる程のことじゃないよ。
会えて嬉しいと思ってくれたことは
嬉しいけどね』と微笑む信長。
『その時、先生に助けてもらった親友が
ちゃんとお礼が言えなかったことを
ずっと悔やんでて、もう一度ちゃんとお礼が
言いたいって言ってたんです。』
『ずいぶん、律儀な友達なんだね。君もだけど。
当然の事をしたんだし、気にしなくて
良かったのに。それじゃ、10年も
悔やませてしまったんだ。申し訳なかったね。
お友達に伝えてくれる?
気にしなくていいし、元気でいるなら
それが、十分お礼になってるからって。』
さりげなく、気遣いの言葉をかける信長に
キラキラと尊敬の眼差しを送る桜奈。
(しぃちゃん、しぃちゃんの好きになった人
めっちゃ素敵な人だよー!!)
それを、ムッとしながら
(相変わらずのタラシだ)と
見つめる家康にドヤ顔でニヤリと返す信長。