第16章 〜慟哭〜
千里は、『先生、本当に
ありがとうございました』と頭を下げ
『栞は、もう大丈夫なんでしょうか?』と
尋ねた。
『ええ、このまま無理をしなければ
来週には、退院できると思います。』
ぱぁっと明るい表情で、安堵したように
『ありがとうございます。本当にお世話に
なりました。』とまた、頭を下げた。
『いえ、お世話になっているのは
こちらですよ。弟が大変お世話になってます。
ご迷惑になってませんか』とまた家康を
チラッと見ながら、尋ねる信長。
『いえ、とんでもないです。家康君に
お世話になってるのは、むしろ私達の方で
一昨日も、熱を出した下の娘の看病を
してくれて、本当に優しくて気遣いの
よくできる方で、私が助けられてますよ』と
ニッコリする千里。
『そうですか。ご迷惑になってないなら
安心しました。今後とも宜しくお願い
致します。』丁寧に頭を下げる信長。
そのやり取りの間中、信長を凝視する桜奈。
それを気にして見ている家康に気づいた
信長は『そちらの方が、栞さんの
妹さんですか?』と聞いてきた。
『はい、そうです。桜奈こちらが
お姉ちゃんを診てくださった小田先生よ
ご挨拶して』と促され
もしかしたらと、海で詩織を助けてくれた
人の面影を探し信長を見つめていたが
(この人が、しぃちゃんの初恋の人なんだ!?)
と本人だと分かり嬉しそうにニッコリすると
『初めまして?』と言ったあと、
(あっ、でも前に会ってるから、初めまして
じゃおかしい?)と、考え一瞬間が開いたが
『あっいや、初めまして妹の桜奈です。
姉がお世話になりました』と挨拶した。