第16章 〜慟哭〜
一瞬、ポカンとして、信長を
みつめる栞だったが、辿った記憶から
(栞お姉ちゃん!一緒にゲームして遊ぼ!・・)
と、記憶の断片が浮かびあがり
当時の面影を信長に見出した栞は
『えっ、もしかして、信長君?
えっ、嘘!こんな大きくなったの?
だってあの時、まだ、こんな小さかったよね』
とベッドに座る自分の腰辺りの空をなぞる栞。
ぷっと、吹き出すと相変わらずだな
と言う表情で『そんな小さくはないですけど
まぁ、当時まだ小学生でしたからね。』
『あはは、そうだよね。こんな小さくは
ないか。でも、驚いた!立派になってぇ。
お姉さん、あっいや、もうおばさんか
あっでも、やっぱりお姉さんがいいな・・・
とにかく、お姉さんびっくりよ!』と
ニッコリする栞。
クックックと、肩を微かに揺らしつつも
笑いを堪える信長。
『大丈夫ですよ?俺にとっては
ずっと栞お姉ちゃんです。』と
優しい笑みを浮かべる信長。
『あはは、嬉しいな!
だいぶ薹がたった、お姉ちゃんに
なっちゃったけど』と後頭部を
押さえながら、照れる栞。
たった一度、会っただけの人。
楽しく遊んだ思い出と
揶揄いがいのある素直な性格の
明るくて、優しいお姉ちゃん。
ふと思い出すと温かな気持ちになる
懐かしい記憶として心に残っていた。
栞があの頃と変わらず、そのままだったことが
嬉しく思えた。
当時、何故か生まれたばかりの
阿茶子のように栞を、守ってあげたいと
遊びながら思った。
たった1日、仲良く遊んであげたのか
遊ばれたのか微妙だったが、弟ができた
ようで、栞も信長が可愛くて仕方なく思った。
小学生の信長も栞を大好きになった。
信長の淡い初恋の相手は栞なのだった。