第16章 〜慟哭〜
『そうなんですか。じゃ、ご主人も信長という
お名前なんですか?僕も名前が信長なんで
様付けされて、驚きました』と言いながら
『そう言えばご両親はお見舞いにいらして
ましたけど、ご主人はお見かけしてないですね』
と信長。
栞は、そう聞かれなんと答えようかと
迷った。夫は、戦国時代にいますなんて
言ったところで、何の冗談?それとも
頭に異常があるのか?と疑われるのが
落ちだと思った。
(ど、どうしよう、何て答えよう?)
そして、口から出た答えが
『か、海外に行ってまして・・・』
『ああ、そうなんですか。脈みせてくださ。』
脈をとりながら
『お仕事でですか?次、首触ります』
首から鎖骨にかけて触れられなが
『ええ、まぁ』と視線をやたらと明後日の
方向に向け誤魔化す栞。
『じゃ、口開けて下さい、あーん』
『あー』と口を開ける栞。
『ご主人は、婿養子さんなんですか?
はい、口閉じて頂いて、結構です』
(へっ?何でそんなこと聞くの?)
『えっ、何故そんなことを?』
電子カルテに打ち込みを、しながら
『いや、苗字が上杉さんのままだから。
僕、上杉さんに小学生の頃にお会いした
ことあるんですよ。妹が生まれた時に
ご両親とお祝いにうちに、来て下さい
ましたよね?うちの父と上杉さんの
お父様が、大学からの友人同士で・・・』