第16章 〜慟哭〜
それから幾日かが過ぎたある日
『信長様、大変です!
佐助から文が届きました!
栞が現代に帰るから、わーむほーるが
開く日時と場所の計算を教えろと催促したらしく
しかも、栞の文の剣幕に負けて、教えたと。』
『何!?それは誠か!』焦り出す信長。
『はい、更に間が悪いことに
わーむほーるが開くのが、今日の夕刻らしく。
まさかと、思い急ぎ知らせようと
文を出したと佐助からです。
それで、女中達に聞き回りましたが
朝から栞の姿を誰もみていないと。
凛桜様は、お部屋に篭りきの様子で
所在は確認しました。
栞のことだから思い込んだまま
突っ走ってしまったのかと』
と秀吉は、焦って信長に報告した。
『くっ、あの猪女め、凛桜は部屋から
出さぬように見張っておけ!』
信長は初めて、栞にはもっと言葉を尽くす
必要があったと思った。
自分の元から、離れていくことも
帰る場所ももうないのだと安心しきっていた。
言わなくとも、察してくれるだろうと。
まさか、ここに来て栞の心を見誤るなど
思ってもみなかった。
(くっ、しくじった。あやつの桜奈と
家康への想いを見誤ったか!)
栞がワームホールに飲み込まれそうに
なった時を思い出し、ゾッとした。
あんな思いは、二度としたくなどなかった。
現代に戻れば、今生の別れとなり
二度会えなくなるかもしれないからだ。
『一刻も早く探し、周辺を探させよ
なんとしても城に連れ帰るのだ!』
『はっ!』と秀吉は、家臣達に指示を出した。