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また、恋してくれますか。

第16章 〜慟哭〜


それは、心が深く傷つくと
生きて行くことそのものが、危うくなったり
支障をきたすからだ。

だから人は、自分を守ろうとする。
それは、本能と言っていいもの。

ただ、自分の心を守ろうとする余り
思い込みから生まれた感情に振り回されて
しまうことも、その後悔に深く傷つき
ずっと引きずることもある。

素直になれなかった自分が
信じることができなかった自分が
恨めしく思えて、自分で自分が嫌になる。

病院で目覚めたばかりの栞の心境は
まさにそんな状態だった。

両親と17年ぶりに再会し、言葉を交わした栞。
涙を流し、心から安堵し抱きしめてくれた
千里の温もりにホッとする自分がいた。

『ずっと心配かけてばかりでごめんなさい。
でもね、私は、ずっと幸せだったんだよ・・・』
(パパとママに会えて、本当に嬉しい。
でもね、私、信長様の元に帰りたい・・)

口にはできなかったが、帰りたい気持ちが
栞の本心だった。

『幸せだったなら、それで充分よ』
鷹介も千里も心からそう思っていた。

自分の想いだけで、戦国時代に残り
愛する人と大切な家族とも呼べる
仲間達との生活は、幸せそのものだった。

一方で、両親に二度と会えないと思っていた
自分が、今更ながら、どれほど愛されて
どれほど心配されていたか痛感する。

同じ親となった今は、両親のこれまでの
心痛を思うと尚更、心が痛んだ。

鷹介も千里も『明日、またくるから』と言って
後ろ髪引かれる想いで、病室を後にした。

パタンと静かにしまったドア。

それを待ち構えていたかのよう
栞の瞳からは
涙が止めどなく溢れてきた。

(バカだな、ほんとバカだ私は。
もう、戻れないかも知れないのに
なんで、なんで、信じられなかったんだろ・・・
ごめんなさい、信長様・・・会いたいよ)
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