第16章 〜慟哭〜
『そっか、そうだよね。他の患者さんに
風邪うつしたら大変だもんね。バイトは
明日も休みだし、うん、今日はゆっくり
休んで、明日会いに行く!!』とニコッとする
桜奈。
家康は、さっきいいかけた桜奈の
言葉にもやぁ〜とした気持ちになり
体調のことはもちろん、桜奈が
病院に行きたいと言うのを咄嗟に引き留めた
事に、自分でも気づいてはいなかった。
(さっき、ずっと探してた初恋の人とか
言ってなかった?まさか、兄貴が桜奈の
初恋の人なのか?マジで!?)
夕食を終えると、鷹介はまた病院へと向かった。
夕食の片付けを二人でしながら
家康は、さっきの《初恋の人》の言葉が
気になっていた。
自分には、そんなこと気にする資格はないと
振り払おうとしても、またもやぁ〜と
霞がかっていく。
そんな考え事をしながら、テーブルを拭いて
いると、『ガシャーン』と食器の割れる
音がして、驚いて振り向くと
顔色の悪くなった桜奈が
泡のついた手を流し台の縁に置いたまま
しゃがみ込もうとしていた。
『おい!大丈夫かよ』とすぐに
桜奈のところに駆け寄り
身体を支えてると、また少し熱が
上がっているように感じた。
『大丈夫です。ちょっと、立ちくらみ
みたいになっただけです。体調良く
なったと思ってはしゃぎ過ぎたかも・・・
あぁ、どうしよ、お皿割っちゃった』