第16章 〜慟哭〜
『あー、そうか。あの時は、パニックに
なってて、覚えてないかもな。
ほら、いつだったかな、しぃちゃんが
海で溺れかけた時があったでしょ?
あの時に、しぃちゃんを
助けてくれたのが、信長君だよ。
あの時は、本当に怖かったみたいで
ずっと泣きじゃくってたからな桜奈は。
それで、たぶん覚えてないのかもな』
それを聞いた桜奈は驚きのあまり
『えっーーー!』と言いながら、立ち上がった。
急に立ち上がったら桜奈に
一瞬、ビクッとし、鷹介も家康も驚いた。
『ど、どうした桜奈?』
驚いたまま、暫し固まり
(しぃちゃんの初恋の人が、家康さんの
お兄さん!?あの時のお兄さんが!?)
『だ、大丈夫か?』と困惑する鷹介。
その声に、またストンと椅子に座ると
『本当に、しぃちゃんを助けてくれた人って
先生なの?間違いない?絶対?』
と、真剣な眼差しで、詰め寄るように
尋ねてくる桜奈に圧倒されつつも
『う、うん、間違いないよ!信長君は
泳ぎが得意で、競泳のインターハイに
出る実力の持ち主で、アルバイトで
監視員やってたしね!ね、ねぇ家康君』と
家康に同意を求める鷹介。
『あっ、はい。まぁ・・・』
(なんで、そんな食い気味なの?)
(そっか、そうなんだ!!
しぃちゃん、見つけたよ。しぃちゃんの
初恋の人!!
めっちゃ、近くにいたよ!)と
くぅ〜っと嬉しそうにする桜奈とは
裏腹に家康は、なんだか面白くない
気分に襲われて行った。