第16章 〜慟哭〜
『でも、ほんとに良かったです。
早く、元気になってくれるといいですね』
『ありがとう。ちなみに栞の担当の先生は
お兄さんがなってくれたのよ。
たまたま、当直でいらしたみたいで
弟がお世話になってますって
ご挨拶までして下さって。
小田先生が担当になって下さって心強いわ』と
安堵する表情の千里。
一瞬、(ゲッ!マジか)と言う表情の
家康だったが、顔を引きつらせながら
『ははは、それは良かったです。
性格はともかく、医者としての腕は
いいので、任せて大丈夫だと思いますよ。
性格は、ともかくですけど・・・』
(うわっ、マジか。よりによって兄貴かよ。)
と、面倒くさそうな顔をした。
耐えきれず、クスクスと笑う桜奈。
(うわっ、マジかめんどーとか思ってそう
2回も性格はともかくとか言ってるし・・・)と
ニヤニヤしながら、家康を見ていると
それに気づいた家康は『何?』と
桜奈に見透かされたような
気がして、ムッとしながら
聞いてきた。
『いえ、お姉ちゃんのお見舞いに行ったら
家康さんのお兄さんにお会いできるし
楽しみだなって思って』とまたクスクスする。
二人だけが分かる含みのある会話を
千里は、微笑ましく感じ
(いつの間にか、すっかり仲良くなったわね。
あんなに、ぎこちなかったのにね。)
と、家康が来たばかりのあたりの桜奈を
思い返していた。