第15章 〜再会〜
『はっー』とまたため息をつくと
『じゃ、急いで帰るよ。このままじゃ
風邪ひくから』と、まだ少し怒っているように
みえ、『はい』と一言だけ言い
しゅんとする桜奈。
折り畳みの傘を広げた家康は
桜奈の手を掴むと傘の下に入るよう
桜奈を引き寄せた。
さっきも、今も、不意に掴まれた手に
心臓がドキドキしっぱなしの桜奈。
ケーキバイキング以来、こんなに家康に
近づくのは久しぶりで、ずぶ濡れの
自分にくっついたら、家康まで濡れてしまう
かも知れないと思った。
桜奈は無意識に家康から
身体を離して行く。
折り畳みの傘は、二人で入るには小さく
距離が空くと簡単に濡れてしまう。
眉間にシワを寄せ、睨むように
『ねぇ、そんな離れたらまた濡れるよ!
そんなに、風邪ひきたいの!』と
声を荒げる家康。
ビクッとし『あっ、ごめんなさい』と
また、身体を近づける桜奈。
肩が時折、触れてしまう距離。
桜奈は自分の心臓の音が家康に
聞こえてしまう気がするほど
ドキドキしていた。
家康は、家康で一刻も早く家に
帰って桜奈を温まらせないと
と少し焦っていた。
それくらい、桜奈の身体は
冷えきっていた。
(慣れないバイトの疲れだって
出てくる頃だし風邪引かせたら、やばいのに。)
知らなかったとは言え、ずぶ濡れの
まま待たせてしまっていたことに
罪悪感と、遠慮して連絡してこなかった
桜奈の他人行儀な態度の
両方にイラついていた。