第14章 〜告白〜
『兄は、小田の祖父の家で引き取ることに
なったんだけど、祖母も早くに亡くなって
母親の代わりに兄を世話できるのが、家政婦
さんしかいない状態だったらしい。
その当時、結婚したばかりのうちの両親が
寂しい環境で兄が育っていくのが忍びなくて
小田の祖父に育てたいって申し出たんだって。
小田の祖父も大事な跡取りだからって悩んだ
みたいだけど両親揃った家庭環境の方が
孫にとってはいいだろうって
うちの両親に預けたらしい。
結婚してからも、桜奈が言ってた
みたいに、お互いの旦那が呆れる
くらい仲がいい伯母と母だったから
兄も母に凄く懐いてて、母も親友の忘形見だし
可愛い甥っ子だしって、絶対甘やかしたんだと
思うんだよなー、あれ。
今じゃ、超がつくオレ様人間だし。
いちいち、人を見透かす感じとか
高圧的な命令系の態度とかほんとイヤ。
マジでムカつく!』
と、途中から、兄に対し溜まっていた
鬱憤を口走り始める家康。
話ているうちに色々と思い返してるのか
どんどん眉間にシワを寄せ、ウンザリな顔に
なっていった。
最初は驚き、悲しい事故の話に
胸を痛めていた桜奈だったが
家康の兄に対する鬱憤話になっていくと
お互いに遠慮などない、本当の兄弟のような
やりとりが見えてくるような気がした。
ああ、そうか。家康自身にとって、実の兄と
変わらぬ存在だからこそ、兄だと紹介する
気持ちに、何一つ違和感も遠慮もないんだ。
今もこうして、憎まれ口をたたきながらも
お兄さんのことがきっと、大好きなんだと
桜奈は思った。