第13章 〜真実〜
(振り解かないってことは、嫌じゃないって
ことだよな・・・引かれそうだけど、今日だけ
俺のわがままに付き合ってもらうからね)
と思う家康も、桜奈と同じくらい
ドキドキしていた。でも、それを上回る
くらい強い気持ちがあった。
昨日の夜、家康はなかなか寝付けなかった。
桜奈を好きだと自覚してからの
最初で最後のデート。もう次はない。
だから多少強引でも明日だけは
自分の気持ちの赴くまま桜奈との
時間を過ごそう。自分の気持ちに嘘をつかず
過ごしたい、身勝手だと責められても
嫌われても構わない。
最初で最後と言う言葉は、何度も家康の中で
ぐるぐると巡り、眠れなかったのだった。
だが、いざこうして手を繋いで歩きだした
ものの二人とも緊張で、無言になっていた。
自分の鼓動の音だけが、自分の中でやたらと
響く。
ただ、どう言うわけか、うるさく鳴り続ける
鼓動とは裏腹に繋いだ手からお互いに伝わる
温もりは思った以上に心地よく、安心できた。
もうずっと以前から、これが当たり前で
あるべき姿だったかのような錯覚に
陥りそうになるほどに。
その心地よさに家康は、うたた寝して
桜奈を怒らせてしまった日を
思い出していた。