第12章 〜終恋〜
『そうだね。気を遣ってくれたって
思った方が、純粋にケーキの味は
楽しめるかも。パティシエ勉強の一環として
遠慮なく、御馳走になっておいでよ。
ちなみに、男女二人きりで出かけるのを
デートと定義したら、岩田君とのお出かけも
デートになると思うけど、その辺は
意識してる?』と、詩織。
『えっ、そうなの?』と、キョトンとする桜奈。
(友達と出かけるのをデートって言わないでしょ
しぃちゃん、変なこと言ってる)
『ああ、岩田君も気の毒に』と哀れみの
表情の詩織。
(分かっちゃいたけど、岩田君も健気に
片想い続けてきたもんだねー)
『えっ、何で気の毒なの?』さっぱり分かって
ない桜奈。
『ううん、何でもない。でも、ほら
岩田君も、友達だけど一応、男子だしね。
二人で、出かけてるとこ見られたら
普通は、デートかなぁって見られるでしょ?』
(これで、桜奈もちょっとは意識
するかな?)
『えーっ、ないない。だって、友達だよ?
行き先、図書館だよ?そんな、デートに
間違われたら、岩田君が気の毒だよ!
あっ、なるほど!だから岩田君が
気の毒ってことか!ああ、そっか
そうだよね、岩田君に好きな人とかいたら
勘違いされてしまうかも。
なんか、申し訳ないことしたかなぁ。』と
考え込む桜奈。
天然が炸裂し、どんどん光成の
意志とも、詩織の思惑とも逆方向へ
走り出す桜奈。
(岩田君、ごめん。余計なことした。
この天然娘には、私でも無理!
あとは、自力でガンバ!)と丸投げし
心で光成に謝る詩織だった。