第12章 〜終恋〜
それから、詩織は
『そう言えば、週末に岩田君と約束した
ってことは、ケーキバイキングは
どうするの?』と尋ねた。
『しぃちゃんに、お昼休みに迷ってるって
相談したんだけど、岩田君に誘われた時に
普通に、先約あるって答えてたよ私。
悩んでるつもりだったけど、本音は
楽しみにしてたんだって自覚した
ダメだなぁ私。誘惑に弱過ぎ』と
落ち込む桜奈。
その話を聞き、ニヤッとした詩織は
『それ、どっちの誘惑?
ケーキ?それとも、徳永さんとのデート?』
と冷やかした。
『も、もちろんケーキよ!それに
///デ、デート///じゃないし、お詫びだし!』と
分かりやすく顔を赤ながら、手の甲を
唇に当て、照れる桜奈。
(こ、これって、デートになるの?///)
初めて桜奈は意識したのだ。
『はいはい、お詫びね、お詫び。』
手をヒラヒラさせ投げやりに答える
詩織だったが
『でも、たぶん最初で最後のお詫びお出かけに
なるかも知れないから、楽しんできなよ。
きっと、この先そんな機会がもしあっても
真面目子ちゃんの桜奈は、例え
誘われても、婚約者さんに悪いから〜とか
言って行かないでしょ?』
と、ため息混じりで桜奈を見た。
『うん、そうかも。今回のも私が
怒ってたから、たぶん気を遣ってくれた
だけの話だし。下宿先の娘が不機嫌なままじゃ
暮らしにくいしね。だから、デートじゃないよ』
デートの言葉に浮かれそうになった
自分に言い聞かせる桜奈。