第12章 〜終恋〜
ケーキの言葉に、ピクッと反応したが
『そんな、気を遣わなくていいですよ。
それに、家康さん甘いもの苦手ですよね』
顔を上げることもなく、淡々と返す桜奈。
(うわ、ケーキに反応はするけど、それでも
ダメか?困ったな・・でもな・・)
『いや、確かに甘いものは、苦手なんだけど
俺が食べる為じゃなくて、ほら、お詫びだから
嫌だろうけど、付き合ってくれない?
でないと、俺ずっと気まずいままになるから
俺の為だと思って。お願い。』
目一杯で下手に出て、顔の前で手を合わせた。
確かに、怒っていたし機嫌も良くない
桜奈だったが、さっき頭を下げて
謝っくれた家康。悪気が無かったことは
桜奈にも、十分理解できた。
そのお陰で、怒りのピークは去ってはいた。
ただ、それでも自分のファーストキスが
あんな形だったことに納得はできず
それに以上に、もう掻き乱され
たくない思いが混ざって、やはり
腹の虫は治ってはいなかった。
しかし、気まずいのは自分も一緒。
せっかく、家康が歩み寄ってくれて
いるのだから、それに乗っかりたいのに
なかなか素直には表現はできなかったが
『そこまで言うなら、ケーキバイキングには
行ってもいいです。でも、ケ、ケーキに
釣られたわけじゃありませんから!
家康さんが、どうしてもって言うからですから
ご、誤解しないで下さいね』と桜奈。
(ケーキって言えば、機嫌が直るなんて
思われるのは心外だもん!そりゃ、ケーキは
大好きだけど)
『ぷっ』と小さく吹き出す家康。
『な、何がおかしいんですか!』
またムッとする桜奈。