第11章 〜別れ〜
一方、涙目で家康の部屋を出て
リビングに逃げるように戻った桜奈。
クッション顔を埋め、早鐘のように
うるさい鼓動と、火照った顔を
鎮めようと必死だった。
食事を摂らずに帰ってきたのだと思い
家康の分の食事も用意したのだった。
夕飯ができた事を知らせに行って
ドア越しに声をかけたが、返事がない。
家康がこの家にきた初日
躓いて家康の上にダイブした桜奈。
同じ失敗はするはずがないと思っていても
部屋に入る勇気がなかなか持てず
ドアの前で暫しウロウロしいた。
けれど、夕飯が冷めないうちにと言う思いと
疲れてるように見えたから寝ていたら
起こして、ご飯を食べさせないと
と思い、意を決してドアを開けた。
案の定、家康は眠っているようで
寝息が聞こえてきた。
部屋に入り、家康に声をかける桜奈。
肩を少し揺すり『家康さん、ご飯できました。
起きて下さい!家康さん!』と言うと
パッと手首を捕まれ家康が何かうわ言の
ように呟くといきなり身体を引き寄せられた
弾みで、唇が重なってしまった。
(えっ?何これ?・・・!!)
大パニックの桜奈は、何とか
家康から離れようともがいたが
頭と背中をホールドされビクともしない。
『んっー、んっー』とジタバタしいるうちに
家康の舌先が自分の唇を押し開こうとした。
ギョッとし咄嗟に歯を食いしばり
両手で挟み込むように
(いい加減、目を覚ませー!!)
バチンッ!
と家康の頬を殴ったのだ。