第10章 〜距離〜
『しぃちゃん・・・やっぱ砕けないと
ダメ?』とまた、ぶぁっと、涙目になる桜奈。
『わっ、ごめん、ごめん、張り切って
振られてこいってことじゃないわよ!
そうじゃなくて、思いを伝えなかった
ことで、自分の中にタラ・レバが
つきまとうかもってことよ。』
涙を拭いながら『タラ・レバ?』と
首を傾げる桜奈。
『そう、タラ・レバ。私の中にあるからさ。
春先にインフルで、片想いしてる人に
すれ違った話したでしょ?』
『うん。』
『その時にね、思い切って声かけようかと
思ったの。でもさ、もしかして、違ってたら
恥ずかしくて死ねると思って。
しかも、インフルでヘロヘロだったし
状況から考えれば、あり得ない行動だし。
で、私は、あり得ない行動で恥をかきたくない
自分を選んだ。だけどね、そっからずっと
タラ・レバが私につきまとってる。
あの時、声をかけてタラ・・
声かけて、海での事を確認してレバ・・
私のこの気持ちは何か、変わったのかなって。
きっと、この先もそう思っちゃう。
そんなんだから、いつまでも埃を被った
片想いを捨てられず、忘れられず
理想のエア彼と現実の彼候補になるかも
知れない人を比べ続けちゃう。
それって、我ながら結構
めんどくさいし、厄介な気持ちなんだよねー』
『しぃちゃん・・・』
(ほんとに、ずっと想い続けてるんだ
タラ・レバかぁ・・私にも残るのかな)
と思う桜奈。