第10章 〜距離〜
パンケーキ屋を出てから
帰りの道中、詩織は不意に
『ねぇ、桜奈。桜奈は
徳永さんを諦めるんだよね?』
と聞いてきた。
『うん、もちろん。恋の先に結婚って気持ちは
変わらないし。誰かを傷つけてまで
自分の恋を貫きたいとも思わない。
そもそも、徳永さんには、大切な
人がいるのも分かったし。
この恋は、お終いにする
夏休みが終われば、徳永さんも引っ越すし
もう、会うこともなくなるから
きっと自然に忘れていけると思う。
今はまだ、気持ちの整理はできてないけどね』
と、寂しそうではあるが、そう決めている
決心は、詩織にも伝わった。
『そっか、気持ちは伝えないままで
終わりにするの?』
『うん、その方がいいかなぁって。
振られることが分かってるのに告る勇気は
片想い初心者の私には、難易度高すぎて無理』
とクスッとする桜奈。
『まぁね、でも、もし、もう会えなくなる前に
気持ちを伝えられるチャンスがあったら
私は、告白した方がいいと思う。
はっきり、バッサリ、断ってくれた方が
私みたいに、片想いを拗らせ無くて済む
気がするもの。ちゃんと、気持ちにけりを
つけられるんじゃないかな?
もちろん、その時の雰囲気とか気持ちの
勢いとか、シチュエーションは必要だろう
けど、好きだと言われて嫌な気になるのは
ストーカーからくらいでしょ?
困らせてしまうかも知れないけど
私は、それでも区切りをつけるために
ちゃんと自分の気持ちをぶつけて
砕け散った方がいいと思うよ。』
と真剣に話す詩織。