第10章 〜距離〜
『いや、事実だし』とバッサリ切り捨てると
『周りから見たら、見てる方が恥ずかしくなる
くらい、世界に二人しか存在してないんかい!
って見える人だって、恋する悩みも不安も
あると思うよって話よ。幸せ見せつけて
るんじゃないわよ、なんて個人的に
ムカつくからとかじゃないわよ』と
キッパリ言う詩織。
(ムカつくんだー)と思いながら
困った顔で笑う桜奈。
『私が言いたかったのは、好きな人の
ことで悩むことを、なんで邪念なんて
表現したのかってこと。
邪念をどうしたいかっていったら
やっぱり払うって表現になるじゃない。
って、ことは、桜奈は徳永さんへの
思いを払いたいって思ってるの?
まぁ、深い意味がないなら
私のただの揚げ足取りだと
思ってもらって構わないんだけど
なんか、引っかかったんだよねー』
と、頭を掻いた。
『ははは、やっぱしぃちゃんは
鋭いね。私、そんな事まで意識して
使ったつもりなかったのにな。
払いたい気持ちかぁ。
あながち、間違ってないかも。私の、家・・
徳永さんに対する気持ちは、徳永さんに
とっても、私にとっても邪念なのかもね。
払ってしまった方が楽になれるんだけどなぁ』
(だって、もう捨てなきゃならない
気持ちだしね・・・)
家と言いかけた事に、ピクッと反応する詩織
『桜奈、今、家康って言いかけた?
しかも、何?払ったら楽になるって?
徳永さんを諦めたいってこと?』