第10章 〜距離〜
それから、試験は3日間滞りなく
終わった。
『はい、時間です。後ろから答案用紙
集めてきて』
ーーガタガタ、ザワザワーー
『ふぅ、終わったな・・・』
筆箱を片付けていると
『桜奈、お疲れー』と
詩織が、桜奈の肩を揉んだ。
後ろを振り返り
『しぃちゃんも、お疲れ様。終わったねー
どうだった?』
頬をポリポリしながら
視線を斜めに上に向け
『ははは、まぁ、まぁかな〜?
でも、たぶん夏休みは、確保できたはず!
たぶん・・きっと?・・大丈夫?』
『しぃちゃん・・言いながら、どんどん
自身喪失していってるのが、私にもわかるよ』
苦笑いの桜奈。
『もう、終わったことは仕方ない!
とりあえず、土曜日以来のパンケーキ食べに
行ってお疲れ様会をするよ!』
『そうだね!パンケーキ♡』
両手を胸の前で組んで、うっとりする桜奈。
脳内では、プレートに乗ったパンケーキが
キラキラと光を放っていた。
『すっごい、恋する乙女顔になる相手が
パンケーキって、どうかと思うよ私・・・』
詩織は、いつもと変わらない桜奈に
どこか、ホッとしていた。
何かあったとは、感じていたが
試験もあって、詩織はあえて
突っ込んで聞くこともしなかった。
桜奈も、試験が終わるまでは
詩織に余計な心配はさせたくなくて
黙っていたのだった。