第10章 〜距離〜
次の日、日曜日だったこともあり
期末テスト勉強の最後の追い込みを
していた桜奈。
自分では、理解ができないところが
あって、家康に助けを求めた。
その日は、ずっと家庭教師と生徒として
勉強を見てもらって過ごしたが
桜奈は、淡々と
家康と接するようになっていた。
冷たい態度な訳ではない
普通に接している以上でも以下でもない。
それが、家康との間に一線を引くと
決めた桜奈の精一杯の自制
でもあった。
笑えるレベルの分かりやすさで
くるくると表情が変わることは
あまりなくなり落ちついて見える
桜奈を昨日までよりずっと
遠くに感じていた。
予想した通り、距離を取ろうとして
いるのだと家康は理解した。
(これでいいんだ、これで・・・)
自分の溢れてしまいそうな、桜奈への
気持ちをぐっと飲み込んだ。
そう思いながらも、すぐ隣で
長い髪を片耳にかけ真剣に問題に取り組む
桜奈の横顔につい見惚れてしまう家康。
こんなに長い時間桜奈が
隣いるのは、出会ってから
初めてのことだった。
身体をほんの少し傾けたら触れる
分からない問題の部分を、どこ?と
覗き込めば、おでこがぶつかって
しまう程の距離。