第10章 〜距離〜
そんな桜奈が可愛いくて、可笑しくて
笑いを堪えてプルプルする家康だったが
『あー、俺は途中で寝ちゃって、内容よく
おぼえてなくて、桜奈ちゃんは
全部観てたよね!ずっと大号泣だった
みたいだし』とニヤっとした。
助けてくれるどころか、梯子をはずされ
(はいー?やっぱりドSだ!意地悪な人だ!)
桜奈は、キッと家康を睨んだ。
『ふふふ、冗談よ。でもきっと
想いが通じ合う、いい映画だったのね!
もう、夕飯にするから、手を洗って
着替えてきなさい』と千里は、リビングに
戻った。
『酷いですよ!と・く・な・が・さん!』
プイッとする桜奈。
『ははは、だって、あんな分かりやすい
誤魔化しすると、思わないじゃん。
たぶん、バレバレだけど。』
えっ!マジで?と言う顔の桜奈。
『もう少し、無自覚をなんとかして
ポーカーフェイスを身につけた方が
いいと思うよ、桜奈は!
分かりやすさが、笑えるレベルだから』と
また、頭をポンポンと撫でると
先に二階へと上がっていった。
桜奈と呼ばれ、ドキっとし
嬉しくもあったが、かなり失礼な
ことも言われた気もする桜奈。
そんな桜奈もまた自分の気持ちを
封印することにした。
家康の話を聞き、小夏さんが到底自分の
敵う相手でもなければ、誰かを傷つけて
苦しめてまで恋したいとは思わない
そう思った。
何より、公園で見た切ない顔を家康に
二度とさせたくないと思った桜奈。
(私のこの気持ちは迷惑で、負担にしか
ならない)そう思い桜奈は、家康との間に
線を引いたのだった。