第10章 〜距離〜
『おじさんとおばさんが心配するし
そろそろ、帰ろうか』と家康は立ち上がった。
無言のままコクッと頷く桜奈。
『ごめん、結構重たい話したね。』
と、家康が言うと、また俯いたまま
フルフルと首を横に振る桜奈。
頭をポンポンと撫でられ『行こう』と
促され、自宅へと戻った。
『ただいまー』『ただいま戻りましたー』と
言うと、『お帰りなさい』と千里が
出迎えてくれたが、すぐに二人の
異変に気付いた。
『あら、どうしたの?二人とも泣いたあと
みたいな顔して』と尋ねる千里。
(やっぱり、バレるよね・・・ママには。)
と、桜奈は思ったが、心配をかけまいと
『勉強のあと、息抜きに映画観てきたの
すっごい泣けるラブストーリーで
号泣しちゃって、徳・・家康さんに
わがままいって、付き合ってもらった。』と
ニコッとした。相変わらず
バレバレの誤魔化しで乗り切ろうと
する桜奈。
ぷッと吹き出し(おばさんには、通用しないと
思うけど)と思いながら
『そうなんです。俺もちょっとウルっとして』と
すでにバレていると分かっていたが
きっと千里なら、察してくれるだろうと
桜奈に話を合わせた。
家康の思った通り、娘の嘘など
お見通しの千里は、『そう、そんなに感動する
話だったの?ママも観てみたいわ。夕飯の
時でも、どんな内容だったか教えてよ』と
ニコッとした。
ギクッとし、あわあわするように
家康に助けを求める目で訴える桜奈。