第10章 〜距離〜
『へーっ、おじさんとおばさんは
大恋愛で結婚したのか。今でも凄く
仲良いよね。俺の場合は、どっちも
当て嵌まらないかな。』と家康。
えっ?と言う顔で、桜奈は家康を見た。
桜奈の顔をみて
『まだ、目が真っ赤だよ』とふっと笑う
家康の視線を、慌てて逸らすように俯き
缶コーヒーで目を冷やす桜奈。
『小夏は、俺の従姉妹なんだ。
で、母の実家でもある徳川家の一人娘で
幼馴染で、姉と同い年の姉の親友でも
あるんだ。俺は、いっつも二人の後を
追っかけて遊んでた。優しくて強くて
俺を、弟みたいに思って、いっつも
守ってくれる憧れの存在だった。
そんな小夏に、俺は、大怪我を
負わせてしまった。
一昨年の秋の話だけど、
台風がきてて、時々突風が吹き
始めたから、急いで帰ろうって
店の前で迎えの車を待ってたんだ。
突風の勢いで壊れた店の看板が俺めがけて
飛んできたことに、俺スマホみてて
気づけてなくてさ
いきなり押されて転んだと思ったら
姉ちゃんが悲鳴あげて、俺を庇うみたいに
小夏が俺に乗っかってた。
何が起きたのか、全然分からなかった
でも、だんだん足の方に生温かい感触を
感じて、呻き声をあげて苦しそうに
してる小夏の左脚をみたら
飛んできた看板が突き刺さってた・・・』
そう言うと、みるみる青ざめ
缶コーヒーを握りしめる手が
小刻みに震えだす家康。
それに気づいた桜奈は
ブランコから飛び降り、家康を抱きしめた。