第8章 〜恋敵〜
『そうなんですか、知らなかった。
じゃ、あのパンケーキも徳永さんの
お友達が作ってるのかな?
超、美味しくて、毎日食べたいくらい
大好き』と、両手で頬を抑えて
うっとりする桜奈。
『桜奈、ヨダレでそうよ』と
詩織に言われ、慌てて口元に手をあて
拭う仕草をする桜奈。
『もう、しぃちゃん、ヨダレなんて
でてないし!うちのママみたいなこと
言わないで』とプンスカする桜奈。
『プッ』と吹き出す家康。
『デジャブだな。俺、昨日も全く同じ
光景見たよ』と、クスクス笑った。
(へー、無愛想と思ったけど、桜奈の
前では、こんなふうに笑う人なんだ)と詩織は
思っていた。
『まぁ、スイーツ命だもんね桜奈は。
徳永さんは、甘いもの平気なんですか?』
『あー、俺は、甘いの苦手。きな粉餅なら
まぁ、食べられるし、好きって言えるかな』
『徳永さん、辛党を超えて、激辛党ですもんね』
と桜奈。
『そうなんだ、辛いの好きなんですね』と
言った詩織は、(だから、激辛カレーか!)と
家康と桜奈の初めての出会いの日の
背景が繋がった。
『ああ、それで激辛カレー店にね・・・』
ボソっと呟く詩織。二人には聞こえて
いないようだった。
『そう言えば、お姉さんとパンケーキ屋さん
に来た時も、お友達のバイト先って
知ってたんですか?』と桜奈は尋ねた。