第6章 〜片想い〜
『本当に!』と驚く光成だったが
『うん、どこか行きたいところあるの?
私でよければ付き合って行くけど?』
と桜奈。
『へっ?』と言う表情の光成だったが
ああ、そう言うことかと頭を抱え
『次の日曜日、暇なら市立図書館
に行きませんか!』と。
『ああ!私も行ってみたかったんだよね!
楽しみにしてるね』とにっこりする桜奈。
『ははは、嬉しいな。僕も楽しみにしてます』
と力なく答える光成。
だが、光成は桜奈の無自覚に
救われた気がした。
焦って告白したが、もう少し距離を縮め
なければ、好きだと分かってもらうことすら
難しいと判断し、他の男子が告白できない
理由も分かった気がして、まだ猶予はある
と思えた。
(卒業までには、必ず振り向かせたい)
光成は、そう思った。
こうして、桜奈の自覚のないまま
光成を振ったと言う噂は流れ
桜奈の『高嶺の花』化は
ますます進んだのだった。
以後、おいそれと告白してくるような男子は
おらず、光成もその噂を逆手に取った。
距離を保ちながら、友人として側にいることで
振られたけど、まだ諦めてないアピールで
他の男子を、牽制しつつ
桜奈の信頼を獲得していった。
もちろん、桜奈と大親友の詩織には
光成の思惑はバレバレだったが、真剣に
片想いをしていることも理解していた
詩織は、何も口出しはせず見守っていた。
自分の容姿に無自覚な者同士の攻防は
傍目から見ていると面白く
詩織だけの密かな楽しみだった。