第6章 〜片想い〜
しかし、ある日
図書室でヒソヒソ話を耳にした。
ーーーA組の女子でさ、いっつもつるんでる
女子いるじゃん、美人系と可愛い系の二人ーー
ーーああ、小野寺と上杉のこと?ーー
ーーそう、上杉さん?前から超可愛いって
思って、俺狙ってたんだよねー、彼氏とか
いんのかな?ーー
ーーお前、クラス違うから知らないか。
小野寺は、サバサバしてるから、彼氏欲しいとか
言ってるわりに、告られも断ってるから
たぶん、いないんじゃない?
上杉は、年中『家康、家康』言ってる不思議系
だけど、すげぇ気さくで、優しい子だから
狙ってる奴多いんだぞ!俺も、その一人ーー
ーーえっ、マジで!狙ってるやつ多いのか
俺、告ってみようかなーー
ーーうわっ、お前、勇気あんなー!ーー
ーーだって、牽制し合ってるだけで
誰も告らないなら、もしかして、行動したら
ワンチャンあるかも知んねーしーー
ーーああ、確かにな、なんとなーく
『高嶺の花』化はしてるかもね
でも、お前のその捨て身の勇気は
俺にはないわーー
そのヒソヒソ話は、光成には
衝撃的だった。
桜奈が、誰かのものになるかも
知れないと言う事実を考えたことすら
なかったのだ。
(上杉さんが、誰かの彼女に・・・?
誰かのものになるってこと?)
真面目で桜奈同様、恋愛感情に
疎い光成だったが、初めて独占欲が
芽生えた。
彼女を、誰のものにもしたくない。
自分のものだけにしたい。
その衝動にも似た、焦りは、普段冷静沈着な
光成の気持ちを、掻き乱した。