第6章 〜片想い〜
『上杉さんは、歴史が好きなんですか?』
『ああ、これ読んでるからですか?
私、実は歴史が苦手なんです。でも戦国時代
から徳川幕府限定の歴史好きで。
特に、徳川家康が大好きなんです。
親友からは、歴史嫌いの歴女って揶揄われ
てますけど』と、クスッとする桜奈。
『へーっそんなんですか。確かに限定って
面白いですね。僕も戦国時代好きです。
どんな戦略で経緯で戦乱を治めていったか
考えるのが楽しいです。徳川家康公も尊敬
する人物の一人ですし。』
『そうなんですか!凄いですよね〜。
260年近くも戦のない世の中に
繋がる戦略立てた人だから。
偶然なんですけど、徳川家康の最初の
奥さんと自分が同じ名前だったのがきっかけで
ハマってしまいまた。』はにかみながら
微笑む桜奈。
語り出すと、その勢いでいつも
引かれてしまう家康の話を、興味深げに
丁寧に耳を傾けてくれる光成の態度は
桜奈にとっては、紳士的に映り
好感が持てた。
加えて本の話を光成とするのは楽しかったが
それは異性を好きと思うそれとは違っていた。
しかし、光成の方は図書室でたまに会うと
本の情報交換をし、話をすればするほど
どんどん桜奈に惹かれていった。
時々、本を話題に話ができるだけで
光成は十分に楽しいと思っていた。
本が好きと言う共通点のある友達。
それでいい、そう思っていた。
それ以上の感情が自分の中にあることを
まだ、自覚できていなかったのだ。