第6章 〜片想い〜
光成が桜奈を初めて意識したのは
高校に入学して、間も無くの頃。
図書室で、本を読んでいる桜奈の
横顔に目を奪われた。
栗色の長くストレートな髪
くりっとした大きな目と
スッとした高い鼻
微かに笑みを湛えた小さな口
髪が落ちてこないように、片耳に髪をかけ
まるで恋人からの手紙でも読んでいる
かのように、恋する表情で
夢中になって本を読む桜奈に
釘付けになった。
西日が差し込み
黄昏色に染まった静かな図書室で
光成は、絵画でも見ているような
錯覚に陥った。
美しいと思った。
そして思わず声をかけたのだ。
『あの、失礼ですけど、何の本をお読み
なんですか?』
『えっ?』と驚き、顔を上げた桜奈。
すぐさま、柔らかな笑みを浮かべた。
(///ドクンッ///)光成の鼓動が高鳴る。
その笑顔で、光成の心は鷲掴みされて
しまったのだった。
『これですか?江戸幕府についての本ですが
もしかして、探してた本ですか?』
と桜奈は尋ねた。