第1章 天女達の街
「おかさん、何の用でありんすか。わっちは花魁道中があるので急いでいるのでありんすぇ。手短にお願いしんすよ。」
喜瀬川と呼ばれたその人は、鈴のような声で凄く美しい言葉を話した。その姿だけで人を魅了し、口を開けば視線を集める。まさにトップの花魁であった。
「あぁ、そうだったねぇ。じゃあ要件を話すが、この子を喜瀬川の禿にしてやってくんねえか。」
「わっちゃあ嫌でありんす。わっちは3人の禿と3人の新造を抱えているのでありんすぇ。おかさんも知ってるでありんしょ。」
「じゃあ1人禿を減らしてこの子を入れなせえ。」
「そこまでしてこの子を入れようとしんすか?
小さい時からわっちの元にいて、一緒にやってきたあの子達6人を手放すつもりはありんせんよ。」
「この子を入れないのは許しませんよ。断る前にこの子を見てみなせえ。ほら、美幸。琴でも弾いてみんか。」
いきなり話をふられて美幸はびくっとした。
しかし、芸の中でも琴は得意分野だ。自分を睨む、この美しい人を驚かせてみたい。