第1章 天女達の街
「ついたぞ。稲光楼だ。」
そこには見たこともない程大きく、美しい建物があった。
扉をくぐると、美しい衣を身にまとった女性達が忙しそうに動いている。
美幸が口を開けて驚いていると、そこそこ年配の女の人が話しかけに来た。
「まぁ!平八さん。久しぶりだねぇ。また美しい子を連れてきてくれたのかい?」
「あぁ。久しぶり女将さん。この子は武士の出だし、よく見てくれ、顔も綺麗だろう。」
「ま〜。貧相な衣に貧相な体。でも凄く綺麗な顔してるじゃないか。」
「女将さん、この子は売れるぞ。」
「そうだねぇ。喜瀬川んとこにつけさせようか。」
「おお、喜瀬川花魁の禿になれば出世間違いなしだなぁ。良かったなぁ。美幸。あの天女様になれるぞ。」
あまりに早い展開に美幸は戸惑っていた。
両親は居ないし、ここがどこかもイマイチ分からない。
でも楽しそうなところだなぁ、と美幸は思った。
「あんた、美幸って言うのかい。年はいくつになる?」
「はい。9つになります。」
「受け答えもはっきりしていていい子だ。天女さまになりたいのかい?」
「はい。」
「よしよし。きっとなれるさ。」