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稲光楼ノ花

第2章 新しい姉妹達


涙はとどめなく溢れ、手に持っていた白いご飯を濡らしていく。
最初は、この華やかな街に来れたことを喜びに感じていた。
でも今は、武士の家とは思えぬ家で、貧しい暮らしをしていた時が恋しい。家を離れて2日程しかたっていないが、すごく懐かしく感じる。

(おとうさま…おかあさま…。そうすけ…さくらこ…!私は今、どこにいるの?どうしたらいいの?天女さまにならなくていいから、おうちに帰りたい…!)

しゆきは声を押し殺して泣いた。最初は何もわからなかったが、両親と弟、妹にはもう会えないかもしれないと悟った。
見知らぬ地で自分はどうしたらいいのか。何をすればいいのかも、まだはっきり分からない。ただ、不安で、帰りたくて、仕方がなかった。
しばらくご飯が進まず泣いていると、襖がゆっくりと開いた。
1人の女の子が入ってきた。自分よりは5つ程年上だろうか。喜瀬川姐さん程の年齢には見えない。

「えっ!!ど、どうしたのでありんすか?」

「なんでも…ないです。どうかしましたか。」
出ない声で冷たくそう言った。

「わっちはおかさんに、しゆきの様子を見てこいと頼まれたのでありんす。しゆきは喜瀬川姐さんの禿でありんしょう?」
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